寒い半暗《はんあん》に沈んでいるのだ。
 頼母は、呪いに縛られたよう……いっぱいにひらいた眼に障子の忌中札を白眼《にら》んで、まだ身うごきも出来ずにいる。
 長岡頼母――三十五、六の男盛り。背の高い、肩の張った、堂々たる人物である。苦味走《にがみばし》った、白眼《にら》みのきく顔をしていて、番士中でも口利き役の、指折りの一人だった。宝蔵院流《ほうぞういんりゅう》の槍の名誉……名誉というほどではないが、それでも、毎朝槍|捌《さば》きの稽古には、たんぽの先で、若党の二、三人は突きのめそうという、それだけの心得はあったもので、刀は無念流、このほうだって、試合に出たと思うと、参ったッ! で引っ込み組ではなく、その日の出来によっては大いに暴れることもある。まず、一かどの武士だった。
 いま、この忌中札を凝視《みつ》めて放心《ぼんやり》立っている頼母の網膜《もうまく》に、あの、元旦の殿中の騒ぎが浮び上って来た。
 この自分も、あの喬之助いじめに、確かに一役受け持ったのだ。
 大目附近藤相模守が、咳払いと共に下城したあと、ちょっと森閑《しんかん》としている時だった。
 御書院番衆は、やれやれと寛《く
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