するごとく、くっきり浮き上っているのが、まことに凶事《きょうじ》そのもののように、不気味に見える。
 障子をあけてはいる。そんなどころではない。室内《なか》にいるかも知れないのだ。この戸ひとつがくろがねの――容易に開けられる障子ではない。頼母は、衆議をぬけて自身ここまで取りに来た、その品物が何であったかさえケロリ忘れて、退《ひ》くも進むもならない。茫然《ぼうぜん》自失の態《てい》……気がつくと、シインと全身に汗を掻いていた。
「何やつのしわざ?――何やつとは、勿論《もとより》、きゃつのしわざに決っておるが、この厳戒の当屋敷へ、しかもこの集会の最中、一体どこから忍び込んで、そして今は、そもどこに隠れているのであろう――?」
 これが、混濁《こんだく》した頼母のあたまへ、最初に来た質問の一つだ。同時にかれは、反対側の雨戸へ、張りつくように身を引いて、じイッ、聞き耳を立てながら、長い廊下の左右へ眼を配った。
 遠く会議の席からかすかに、人声が伝わって来るだけ、何の変異《へんい》もなく、静まり返っている。部屋の中から射す灯《あかり》で、そこらは茫《ぼう》ッと明るく、廊下の先は、夏の夜ながらうそ
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