場はそれなりに、天童利根太郎が五十七名の剣士をつれて四谷へ押し出す。横地半九郎方を襲っているのが喬之助ではなくて茨右近であろう等《など》とは脇坂山城守ゆめにも知らないから、今夜こそは間違いなく神尾喬之助を討ち取ることが出来るであろうと、大層な御機嫌でなおも造酒に今後の事を頼み込み、その忍びの訪問から帰って行く。造酒が交換に園絵のほうの事を念を押すと、村井長庵を使えば巧く遣れるだろうと思っている山城守は、大きく合点《うなず》いて胸を叩きながら、待たせてあった駕籠に乗った。
この喬之助、魚心堂、お絃の三人組と、天童利根太郎、鏡丹波を頭に源助町から押して来た五十七名とが出会ったのが、瘤寺に近い富士見の馬場、ソロソロ東が白もうという頃で、夜露の野を蹴って乱戦は朝に及んだが、源助町の勢は驚いたろう。何しろ半九郎方で暴れてるはずの神尾喬之助が、いきなり此処へ飛び出したのだから――もっとも、こっちがほんとの神尾喬之助なんだから、知っていれば別に不思議はないけれど、それに、つんつるてんの飛白《かすり》の筒《つつ》っぽに、白木綿の兵古《へこ》帯を太く巻いた大男が、茶筌《ちゃせん》あたまを振り立てて、そ
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