んとの喬之助なんだから、知っていれば、べつに不思議はないけれど……。
未明《みめい》、さわぎを聞いた御用の者が駈けつけて来て、剣林《けんりん》、勝負をそのままに四散したが、こうして、江戸の春は更《ふ》けて、やがて青葉若葉の初夏となった。本郷追分のさき、うなぎ畷《なわて》と呼ばれるところに、西丸御書院番、長岡頼母の屋敷、全番士が寄り合って対喬之助策協議《たいきょうのすけさくきょうぎ》の最中、あるじの頼母が見つけたのだ。自室の障子に紙札がかかっている。
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┌────┐
│ 忌中 │
└────┘
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……このおれが、生きている死人! とは? 頼母、蒼白になっていた。
ここに居る!
一
あの夜、富士見の馬場の乱闘は、無勝負に終ったのだった。こうだった。喬之助の知らぬうちに、四番首挙げて悦ばせてやろうと、茨右近が独断《どくだん》で、四谷自証院《よつやじしょういん》、瘤寺裏の横地半九郎方へ斬り込んで、居合わせた松原源兵衛をその四番首にした時、先方にも備《そな》えがあって、芝源助町の神保造酒、無形一刀流の道場から、春藤幾久馬
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