の出幕じゃ。約束どおり――」
 すると、大きく合点《うなず》いた造酒、一同を振り返ってガミガミ呶鳴《どな》った。
「おれが行く迄のことはない。三羽烏の一人を立てて、みんなで行け!」
「しかし先生、大矢内氏も、比企氏も、天童氏も、三人ともぐっすり眠っていて、いくら起しても起きないんで……」
「そうか。起すには起し方があるのだ。三人のまくら元で、刀を合わして音を聞かせろ」妙な眼覚《めざまし》時計だが、とにかく、こいつをやったのだろう。間もなく、三羽がらすの一人天童利根太郎を真っ先に、鏡丹波を案内に立てた同勢五十七名、瘤でら裏へ駈けつけて神尾喬之助(実は茨右近)を一|潰《つぶ》しに潰そうと、揉《も》みに揉《も》んで深夜の巷を飛んでいた。

      七

 園絵はもう築土八幡の家へ帰って、帯屋小路の喧嘩屋には、神尾喬之助がひとり、くどいようだが茨右近と同じ顔と服装で、ゴロリ手枕《てまくら》、壁《かべ》に貼った十七人の名前を見上げて、つぎの犠牲者とその襲撃法《しゅうげきほう》でも考えているところだ。
 そこへ、息せき切って帰って来た知らずのお絃……その話を聞くと、今夜、喬之助には内証で、右近
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