ると、山城守は頼もしそうに、
「ウム、その一言が何よりの頼りじゃ。園絵のほうは、さっそく長庵めに命じて――」ひとり言、何か心中に画策をめぐらしている。造酒は、傍《かたわ》らの愛刀、阪東《ばんどう》二|郎《ろう》幸村《ゆきむら》の鍛《う》って野分《のわけ》の称ある逸剣を取って、ニヤニヤ笑いながら、「金打《きんちょう》しよう」
「うむ。盟約《めいやく》の証《しょう》じゃ」
 行燈《あんどん》の下、山城守と造酒、打《ちょう》! 打! と鍔元を鳴らして、微笑を交した。園絵をさらってこの神保造酒に与えるという大仕事――その役割りがまたしてもどうやら長庵へ行きそうで、どうもこのところ、村井長庵ばかに忙しくなりそうだが、話も大いにこんぐら[#「こんぐら」に傍点]がって来て、作者も楽でない。それはいいが――。
 ふたりがぼそぼそ話し合っている部屋のそとの縁に、ソッと立ち聴きしている女のすがたがあった。
 市松お六といって、深川の羽織上《はおりあが》り、神保造酒の妻とも妾《めかけ》ともつかず、この道場を切り廻している大|姐御《あねご》なのだ。
 姐御とは言ったが、それは本性《ほんしょう》のこと、町道場で
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