に刷《は》いて来て、さながら鋼白色《こうはくしょく》の大扇《たいせん》、末広形《すえひろがた》の板のごとくに、右近の手に一過した。
 一撫で撫でたのが、余りのスピードで、震幅《しんぷく》だけの平面のように見えたのだ。
 跳び上った春藤幾久馬をはじめ、一同ダダダッ! と後へに退って、剣芒《けんぼう》を揃えて一団に集まる。
 誰も、斬られたものはないはず。
 だが、不思議! 右近の剣身《けんしん》に、スーッと一筋。血糊が走っている……。
 右近は、こみ上げてくる笑いを、冷々《れいれい》と吐き出していた。
「自分の胴が真ッ二つになってるのを、知らずにいりゃア世話あねえや」
 あッ! と一同のうしろに当って、急に呻《うめ》き声がしたので、ふり返って見た。
 松原源兵衛である。かれは後部にいたのだ。それが、前の者が誰もかすり傷一つ負わないのに、どうして源兵衛が今の一剣でやられたのだろう。観化流、鎧通《よろいどう》しの一手、鎧の隙間《すきま》を通して、内容《なか》の身体を斬り捌《さば》くという、あれだ。源兵衛は、うム! おめくと同時に、游《およ》ぐように前面へのめってバッタリ、右近の言った通り、胴
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