郎は顎をしゃくって、「何という不注意だ。すぐ直しなさい」
「でも、旦那さま」婢《おんな》は不思議そうに、「わたくしは確かにちゃんと立てて置いたのでございますが」
「そうだ、そうだ」どうも余計な口をきくのは、いつも丹ちゃんのようで、「なア、おめえが悪いんじゃアねえ。屏風が勝手に……」
半九郎は、尚もキッとなって婢を睨《ね》めつけた。
「イヤお前の粗忽《そこつ》である。さっさと直しなさい」
ハイと口の中で答えた婢、六人の眼を集めて、部屋の隅の問題の屏風に手をかけた。女性が愕《おどろ》いた時の声は、今も昔も大概きまっている。絹を裂《さ》くように叫んで、退《の》け反《ぞ》った。
「あれ――イッ!」
同時に、ぱッ! 向う側から屏風が倒れて、ムックリ坐り直した一人の人物がある。
肩に継布《つぎぬの》の当った袷《あわせ》一枚に白木《しらき》の三|尺《じゃく》、そろばん絞《しぼ》りの紺手拭で頬かむりをして、大刀といっしょに両膝を抱き、何かを見物するように、ドッカリ腰を押しつけているのだ。侍とも無頼漢とも知れない、まことに異形な風俗、呑気な顔で六人を見わたして、ニコニコ笑った。
思わず、さッ!
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