げ》なかった。アハハハハ」
松原源兵衛も、やっと蒼白い笑いをうかべたが、はてナ? と首を捻《ひね》って、
「しかし、今の先まで、屏風は、逆《さか》さになぞなっておらんようだったが……」
源助町助勢の長《ちょう》、遊佐剛七郎がヌックと起《た》ち上った。剛七郎|身長《みのたけ》六尺近く、有名なムッツリ屋、周防《すおう》の国は毛利左京亮《もうりさきょうのすけ》、府中《ふちゅう》五|万石《まんごく》に後足《あとあし》で砂をかけたという不忠[#「不忠」に傍点]の浪人――ナニ、変な洒落だ? とにかく、コイツ面倒臭いと思ったのだろう。
「直《なお》せばよいではないか」
ツカツカと屏風のほうへ行こうとする。半九郎が停めた。家主《あるじ》の責任というとこだ。
「あアいや。下女《げじょ》めの粗相《そそう》、呼んで直させまするで、そのままに、そのままに」
ポンポンポン! 手を叩く。
「コレヨ、誰ぞある――」
春藤幾久馬と丹ちゃんは、その間に、手酌《てじゃく》でせっせと傾《かたむ》けている。
二
侍女の一人が敷居ぎわに手を突いた。
「これ、屏風がさかさまになっておるではないか」半九
前へ
次へ
全308ページ中189ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング