うずいきくどくぼん》の一|節《せつ》から胎発《たいはつ》した無形《むぎょう》一|刀流《とうりゅう》だ。
 人間の慾のなかで、一番大きくかつ一番|根強《ねづよ》い慾、すなわち生命に対する執着《しゅうちゃく》を去って、無形に帰れと教える。つまり、はじめから命の要《い》らない流儀である。生きようとは思わないのだから、怖《こわ》いものはない。剣を把《と》れば死ぬ気だから、じぶんを衛《まも》ろうとしない。攻め一方の、じつに火焔《かえん》のごとく激しい剣法であった。
 こうして、日常すでにいのち[#「いのち」に傍点]を無視している連中だ。この、諸慾中の最大慾だけは、サラリ西の海へ流しても、他の慾は、別である。生命が要らないだけに、酒と女は大いに要る。じっさい、この二つ以外何ものもない、大悟徹底《たいごてってい》したあぶれ者が揃っていたものだ。
 この源助町の道場、無形一刀流、神保造酒のところへ、用心棒を束にして貸してくれと申し込んだ。アイ来たとばかり、ゴロゴロしてるやつが毎晩出かけて来る。無料《ただ》で一晩中酒が呑めるんだから、こんなうまい話はない。今夜も、いま、遊佐剛七郎、春藤幾久馬、鏡丹波がや
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