い刀を引きつけて、悲壮なる面《おも》もちは、まるで出陣の宴だ。これが毎晩のことだから、さぞ神経《しんけい》が疲れたことだろうが、そのうちに、頼んであった助軍《じょぐん》が到着する。遊佐剛《ゆさごう》七|郎《ろう》、春藤幾久馬《しゅんどうきくま》、鏡丹波《かがみたんば》、三人の浪人である。
 その頃。
 芝の源助町に道場をひらいて荒剣《こうけん》一|風《ぷう》、江府《こうふ》の剣界を断然リードして、その腕《うで》、その胆《たん》、ともに無人の境を行くの概あった先生に、神保造酒《じんぼうみき》という暴れ者があった。神保造酒……無形《むぎょう》一|刀流《とうりゅう》の正伝《しょうでん》。
 四百|万億《まんおく》阿僧祇《あそうぎ》の世界《せかい》なる六|趣《しゅ》四|生《しょう》の衆生《しゅうじょう》、有形《うぎょう》のもの、無形《むぎょう》のもの――有形無形《うぎょうむぎょう》のうち、慾界色界《よくかいしきかい》の有情《うじょう》は有形《うぎょう》にして、無慾無色界《むよくむしきかい》の有情《うじょう》は無形《むぎょう》なり……なンかと大分むずかしい文句だが、この法華経随喜功徳品《ほけきょ
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