》れた。
 やきもち坂を登る。脇坂様のお屋敷へ。

      七

「ほホゥ、筆幸から献上物《けんじょうもの》とナ」
 登城をしない日は、退屈《たいくつ》な一日だ。
 市ヶ谷やきもち坂の甲良屋敷である。
 西丸御書院番頭脇坂山城守は、ここお上《かみ》やしきの奥まった庭を、ブラブラ散歩していた。
 お力士さんのように肥ったからだに、紋服の突《つ》き袖《そで》が似合った。泉水《せんすい》のまわりを歩いているのだ。いい天気だ。金いろの水のような日光が空間《くうかん》を占めて、空は、高く蒼い。草は、みどりの色を増して来ているのだ。山城守は、それが特徴の、面のように無表情な顔を据《す》えて、さっきから、築山の横の同じところをいったり来たりしていた。
 空は晴れても、山城守は、気が重いのだった。
 気が重い――無理もない。
 ところは柳営《りゅうえい》だ。時は元旦だ。あんな事件のあったのは、山城守の責任なのだ。監督不行届《かんとくふゆきとど》きなのだ。よく切腹を仰せ付けられなかった。よく閉門謹慎《へいもんきんしん》で済んだ。が、表面はそれで済んでいるが、内実、山城守のいのちは、兇刃神尾喬之助の逮
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