内儀ふうに装《つく》った知らずの姐御にくっついて、勘太も茶店へはいって来る。手に何か持っている。萠黄のふろしきに包んだ、箱のようなものである。
 何か思わくでもあるのか、スッカリ化《ば》け切《き》った知らずのお絃だ。腰掛けの間を通って、幸吉のそばへ行って腰を下ろす。勘太も続いて、となりに掛けた。同じようなふろ敷包の箱が、二つ並ぶ。
 思いがけなく、美《い》い女《おんな》が傍へ来たので、筆屋の若旦那は、もうゾクゾク心臓の高鳴《たかな》りを感じて、何とかうまくモーションをかけよう……機会を狙《ねら》っているうちに、お絃と吃勘《どもかん》はアッサリお茶を飲んで、
「お婆さん、御馳走さま。お茶代はここへ置きますよ」
 チャリンと盆へ文銭を投げて、お絃は立つ。勘太も、箱包をかかえてあとを追う。二人、いそぎ足に出て行った。
 それで気がついた幸吉、
「おい、定公、そろそろ出かけようじゃないか」
「そうですね。では、参《まい》りましょうか」
「荷物を忘れちゃいけないよ」
「この通り、シッカリ抱いていまさァ」
 毎度ありがとう。どうぞおしずかに……茶汲み婆さんの声に送られて、ふたりも、腰かけを離《はな
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