計《はか》らいで、お城の油御用を一手に引き請《う》けたいという念願。例の村井長庵をも頼み、せっせと脇坂様へ敬意を表して来たのだが、それが、このところ、あの幸吉の訴人沙汰で、ちょっと不首尾《ふしゅび》になっているので、きょうの贈り物で一気に回復しようという寸法だ。箱がだいぶ重そうなのは、筆幸、よほど張りこんで、ぎっしり山吹色が詰まっているとみえる。
お茶をもう一ぱい、金鍔《きんつば》をもう一つというので、定公め、なかなか腰を上げないのだが、べつに急ぐこともないので、幸吉もついそのまま、のんべんだらりと茶店に根を生やしていると……めずらしい晴天だから、人出が多く、茶店はかなり混《こ》んでいる。
女がはいって来た。
若い綺麗な女だ。商家のお内儀《かみ》といった態《てい》で、供をつれている。
「さあさ、ちょっと休んで行きましょうね。歩くのはこれで、何でもないようで草臥《くたび》れるからねえ。お前も大変だったろう? 御苦労だったねえ」
「へい、ドドドどうも、ア、相済みません」
喧嘩屋の身内《みうち》、どもりの勘太こと吃勘《どもかん》と来たら、名前の示すごとく猛烈な吃《ども》りなのだ。
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