言い出したんじゃないか」
「いンや、お前《めえ》が言い出したのだ」
互に善根をゆずり合っている。
「あああア」お絃は欠伸《あくび》をして、「だけど蓮根てものは、寒いもんだねえ」
「蓮根ではない。善根である」
「あい。ソノ根《こん》さ」
無駄口をきいているうちに、どっちが先ともなく眠りこけて、並んで膝を抱いたまま、壁の根に背をあずけてコクリコクリやっていると――何刻《なんどき》経ったか、ふと、しきりに頭髪《あたま》にさわるものがあるので、右近は夢中で手をやって払い退《の》けた。
糸《いと》のようなものだ。
払っても払っても垂れ下ってくるのだ。が、こっちは寝ぼけている。色いろに頭を動かして避《よ》けていると、やがて右近、ぎゅうと髷《まげ》の根を掴んで引き上げられるような気がして、眼がさめた。
何か、かみの毛に引っかかっている。釣針《つりばり》らしいのだ。糸の先につり針がついて、そいつがどこからか伸びて来て、右近の結髪《かみ》に掛り、グウッと上へ持ち上げようとしている……まさに何者かが、喧嘩師茨右近先生を釣り上げようという魂胆《こんたん》!
そばのお絃は、それこそ何も「知らず」に
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