察しのわるい人だねえ。見るもんじゃアないよ。こっちへおいでよ」
グングン引っ張るから、さすがの観化流逸剣《かんかりゅういっけん》茨右近も悲鳴を揚げて、
「ア痛タタタ! ナ、何をしやアがる。兎公《うさこう》じゃアあるめえし」
「馬鹿だよこの人は、お前さんが立って見物してるもんだから、喬さんはすっかり照れてるじゃアないか。サ、こっちへおいでよ」
見ると、なるほど喬之助は、園絵を前に喧嘩屋のふたりをはばかってニヤニヤ笑いながら、頭を掻《か》いている。右近は気がついて、
「いやア、これア俺が悪かった。犬に食われろなんて言われねえうちに……ヤイ! お絃、そういう手前《てめえ》こそ、見物して笑ってるじゃアねえか」
「あれサ、あたしゃ御新さんを唆《け》しかけていたんだよ。ねえ御新さん、久しぶりですもの。しっかり可愛がってお貰《もら》いなさいよ」
「余計なことをいうやつだな。見ろ、園絵さんは真赤になってしまった」
「さ、こっちも二人づれ、早く出ましょう」
お絃は、右近の耳を引ッ張って戸外《そと》へつれ出す。ピシャリあとを締めながら、
「ホホホホどうぞ御ゆっくり……」
は、また一つ余計だった。
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