……とやるところだが僕も一つ、この手を用《もち》いよう。
ただ、これがすべて喧嘩屋夫婦の扱いと知って、喬之助は、何にもいわぬ、これだ――と掌《て》を合わせんばかりに感謝する。園絵は、はいってみると、そこに喬之助がいて、いま一緒に来た駕籠の一つからも喬之助そっくりの男が立ち出《い》でたので、ビックリして二人を見較《みくら》べている。これには何か仔細《しさい》のあることであろう、あとでゆっくり訊《き》こうと、園絵はそのまま喬之助の前にガックリ崩れて、
「…………」
言葉はない。泣き伏した。これが西洋物だと、何か洒落たことをいいながら、人眼《ひとめ》もなく抱きつく。キッスする。いとも華《はな》やかなる場面だが、たしなみの深かった昔の日本人だから、そうは行かない。
それでも、会いたかった見たかった……情緒纏綿《じょうちょてんめん》たる光景なので、ついポッカリ口をあけた茨右近が、自分の家だけれどはいっていいのか悪いのか、土間に立ってボンヤリ眺めていると、御意見無用、いのち不知と二行の文身《ほりもの》の読めるお絃の右手が伸びて来て、つ[#「つ」に傍点]と右近の耳を掴《つか》んだ。
「何だい。
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