ろうとする頃で、ふり返れば、蜂須賀中納言《はちすかちゅうなごん》の屋敷の森に、芝居めいた下弦《かげん》の月が白かった。
 あれから真っ直ぐに大通りへ出て、間もなく、九段下へさし掛かる。
 一行五人、ぶらぶら歩きである。夜道《よみち》だ。主従《しゅじゅう》という堅《かた》ッ苦しさもいつの間にか脱《と》れて、一同、気やすな心もちだった。
 黙って歩けない。
 ばか話がはずむ。
 賑《にぎ》やかな笑い声を、夜更《よふ》けの町に流して行った。
 やがて、九段下から中坂《なかざか》のほうへ曲ろうとするとき、向うにぽっちり人影が見えて来たが、夜遊びにでも出た若侍《わかざむらい》であろうと、誰も気にする者はない。
 おびえているところだから、これだけの人数で大迫玄蕃を脅《おど》かして、あとから笑いにしてやろうと、ワイワイ相談しながら歩いて行く。
 すれ違おうとした。
 と、向うから来かかった人間が、先に立ち停《ど》まったから、浅香《あさか》慶之助の一行も、何気《なにげ》なく足をとめて見守ると、
「おう、浅香ではないか――」
 という声に、ハテ誰であろう? いぶかしく思いながら、
「うむ、いかにも拙者
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