側にちかい部屋の敷居《しきい》ぎわまで出て来て、思い出したように、しきりに爪を切っているところ。
大名小路《だいみょうこうじ》、雉子《きじ》ばし御門横、砲筒御蔵《ほうづつおくら》の前の浅香の屋敷である。
もう寝《しん》に就こうかと思っていると、あわただしく用人がやって来て、もちの木坂の大迫様から仲間《ちゅうげん》仁平が使いに来たというので、早速、すでに閉めた雨戸を一まい開けさせ、その外の庭先へ仁平をつれて来させて会ってみると……。
何者の悪戯《いたずら》か、それとも真の脅迫《きょうはく》か。穏《おだや》かならぬ貼《は》り紙がしてあるという。それにつけて、大迫玄蕃が自分に助護《じょご》を求めている、と聞いて、剣快の名をほしいままに浅香慶之助、心からおかしそうに、
「大迫も弱《よお》うなったナ」
笑った。が、助力《じょりょく》を求めて来られた以上、捨てても置けぬ。些細《ささい》な事にきまってる。どうせ笑い話になるだろうとは思ったが、念のため、邸内《ていない》の道場において腕に見どころのある、用人若党らを四人引きつれ、仁平を案内に、浅香慶之助が屋敷を出たのが、ちょうど五ツ半が四ツへ廻
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