《すき》を窺《うかが》ってじいッ――見つめているうちに、かれもまた一|廉《かど》の武芸者《ぶげいしゃ》、ただちに看破《かんぱ》出来た。
 もしこの神尾喬之助が真《しん》の狂人《きょうじん》なら――。
 第一、こうして飽《あ》くまでも床の間を背に、玄蕃に刀を執《と》らせないように用心を払う訳もないし、何より、身体に隙《すき》があるはずである。が、今、そうして保名《やすな》狂乱もどきにボンヤリ突っ立ってる喬之助には、玄蕃の剣眼《けんがん》から見て、正に一|分《ぶ》一|厘《りん》の隙もないのだ。
 全身これ隙のごとく見せかけて、そうそうろうろう、つまずくように、爪探《つまさぐ》るように、ソロソロと歩いて来る――のだが、全身これ剣精《けんせい》、構えのない構えは刀法の秘粋《ひすい》である。それにピッタリ当てはまっているのだから、神尾喬之助、狂《くる》ったと見せて、狂ったどころか、内実は虎視眈々《こしたんたん》、今にも、長|刃《じん》、灯《ひ》を割《さ》いて飛来《ひらい》しそう……。
 いけない! 先《せん》を越《こ》せ! と思った玄蕃、叱咤《しった》した。
「僞《にせ》狂人! 尋常に斬《き》り
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