った大迫玄蕃が、
「何だ、そこまで出て来いというのか。何だ一体」
 渋々《しぶしぶ》履物《はきもの》を突っかけて玄関を出た。見ると、屋敷の者が四、五人、手に手に提灯《ちょうちん》を持って、ポカンと口を開け、ひどく感心したように玄関の戸の表側《おもてがわ》を見上げている。
「殿様、あれを――」
 長庵が指さした。下郎の一人が、手の提灯を高だかとさし上げる。
 何だ――と、眼を遣った大迫玄蕃、しずかに読み出したのだが、途中から声が消えた。
「なに、お命頂戴、ただいま参――と。ふウム」動揺《どうよう》した顔がさッと長庵をふり返って、「これ、長庵、悪戯《あくぎ》にもほどがあるぞ。仮りにも、命を貰うとは何だ。ヤイ、命を貰うとは何だッ」
「へッ?」顔突き出した長庵、「すると、何でございますか。手前がこの紙を張って置いて、人|騒《さわ》がせに喚《わめ》き立てたとおっしゃるので――? 聞えません。殿様、そいつア聞えません。殿様方のお屋敷はお城も同然、お玄関と申せば大手先、何ぼ長庵めはしが[#「しが」に傍点]ない町医風情とは申せ、それだけの儀は心得ておりまする。その大手へ、事もあろうにお命が所望などと、
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