ござりまする」
「何と? 長庵が参った。きゃつまた、何ぞ悪だくみをしおって、このわしに、一泡ふかせようの魂胆《こんたん》でがなあろう。ウフフ、誰がその手に乗るものか。ドレ、ひとつ見てやれ」
お城へ出ては万年平番士だが、それでも二千石のお旗本、玄蕃、家では相当に威張っている。
綱《つな》まきの刀をその儘にして、源伍兵衛をしりへに、肥《ふと》り気味の身体を玄関《げんかん》へ運んだ。
「おう、長庵か。よく来た。ちょうど羽衣を唸《うな》ってナ、相手のほしかったところである。上れ」
敷台《しきだい》に立ちはだかって戸外《おもて》へ呶鳴《どな》った玄蕃、三ッ引の紋を置いた黒|羽二重《はぶたえ》を着流し、茶博多《ちゃはかた》を下目に結んで、大柄な赭黒《あかぐろ》い顔と言い、身体がたっぷりしてるから、なかなかどうして、貫禄《かんろく》のある立派な殿様ぶりだ。
五
長庵は、口もきけない様子。宗匠頭巾《そうしょうずきん》を片手に握り締めて、しきりに坊主頭を振り立てながら、懸命に手招《てまね》ぎする恰好が、どうも尋常でない。まんざらいつもの悪ふざけとも思えないから、不審《ふしん》を打
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