と言えば分別《ふんべつ》盛りの好い年をしながら、ああして戸部近江之介他一同が、伊豆屋のお園の件をはじめ、つまらぬことで事ごとに眼に角を立てて新参《しんざん》の神尾喬之助を嬲《なぶ》り物にしているに際して、陰《いん》に陽《よう》に庇《かば》い立てでもするどころか、この玄蕃、組与頭戸部近江へごま[#「ごま」に傍点]を擂《す》る意《こころ》も手伝って、自分から先に立って喬之助いじめに日を暮らしたのだった。
 事件のあった元日だってそうだ。
 ひれ伏していた喬之助に、
「当人は泣きよる?」
「なに、泣いておる?」
「ほほう、すりゃ、人形でも涙をこぼすと見ゆるナ」
「面白い。見てやれ」
「そうじゃ。引き上げて、顔を見い!」
「構わぬから、髷《まげ》を掴《つか》んで引き起すのじゃ」
 すこし大人気《おとなげ》なかった。が、あの場合、行き掛りもあった。調子に乗って手を伸ばし、ムンズと喬之助の髪《かみ》を握《にぎ》ってグイ! 力まかせに引っ張り上げたのは、この大迫玄蕃だった。
 ちと遣り過ぎたようだわい――あの後すぐ、軽い後悔《こうかい》を感じたように、玄蕃は未だにそう思っているのだった。
 それから
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