青年の多い番士部屋にあって、四十の声を聞ている位だから、事務的才能はなかったに相違ない。陰で同役が万年平番士《まんねんひらばんし》の玄蕃殿と悪口《あくこう》をたたいた。が、その万年平番士の大迫玄蕃、天二物を与えずのたとえの通り、今だってそうだ、スポーツに凝って野球やラクビイの選手か何かで筋骨隆々《きんこつりゅうりゅう》としてるやつに、あんまり秀才はない。と同時に、秀才はどうも蒼い顔をして、大風の日、表を歩くと空へ舞い上っちまうほど、ナニ、そんなのもあるまいが、とにかく、痩《や》せてヒョロヒョロしてるのが多いようだ。昔だって同じことで、なるほど、大迫玄蕃は万年平番士、いつまで経《た》っても秘書課の隅《すみ》にくすぶっているほうで、役所では、あんまり幅《はば》の利《き》く顔ではなかったが――刀である。剣腕《けんわん》である。この大迫玄蕃に、一同が二目も三目も置いていた点は。
 何しろ、力があって剣《けん》が立つということになっていたから、根《ね》がさほど利口《りこう》でない大迫玄蕃、年功というわけで平番士の中では比較的|上席《じょうせき》にもいたし、城中で怖い者がなかった。だから、四十
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