ったが、まだ元服前のために、むざむざと引っ込んで味方の負けるのを見ていなければならなかったのである。だが、それも去年まで!
 平馬、今年十五歳、元服して大人になった姿はじつに凛々《りり》しい武者ぶりであった。
 下妻の若侍たちは、平尾出場の噂に、仕合に出ない先からもう負けたつもりで銷沈《しょうちん》している。
 このとおり敵に恐れられている平馬は、じっさい人が怖がるのも無理もないほど、鍛えに鍛えた逞《たくま》しい体力と鉄石のような負けじ魂と加うるに、この数年師匠を驚かすくらいに上達した北辰一刀流の剣技――この三つの権化《ごんげ》であった。
 この武骨の平馬、やさしい鶯が縁になって、その鶯よりも優しい飼主の少女と今こうして庵《いおり》の竹縁に腰をかけて話している。
 庭いっばいの日光に、苔《こけ》の匂がむせかえるようだ。

   闇討の相談

「ホウホケキョ!」
 と、また鶯が鳴くと、少女は、平馬の顔を見てはにかむ[#「はにかむ」に傍点]ようににっこりした。
「可愛い鶯でござりましょう。私は大事にして飼っているのでございますが、ずいぶん声のいい鶯だとおっしゃって、皆様が賞《ほ》めて下さい
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