》まででも平馬を送って行くということになって、四人、霧の中に提灯をともして、矢筈の森を後にした。
 やがて来かかったのが月見橋|橋畔《きょうはん》。
 霧の奥に川の水音が寒々しく流れて、寂寞《じゃくまく》たる深夜のたたずまい。
 と、橋の袂にぽつり[#「ぽつり」に傍点]と一つ提灯の灯が見えて、何やら黒い人影が――。
 近づいて見ると、橋に丸太を打ちつけて、それに紙が貼ってある。
  橋の中央破損につき通行禁止の事[#「橋の中央破損につき通行禁止の事」は太字]
 平馬が提灯をつきつけると、こう読めた。提灯を持って番人が立っている。
「どうしたのだ? 橋の真中がこわれたとあるが――」
 平馬たちが番人を返りみると、番人の男は続けさまにおじぎをしながら、
「へい。どうしたものか真中から少し下妻の方へ寄ったところが落ちまして、通れないほどではございませんが、なにぶんこの霧で危のうございますから、いっそ通行を禁じた方がよかろうということになりましたので、へい」
「いつから禁止になったのだ?」
「いえ、つい今しがたでございます。いま手前が来て通行止の丸太を打ちましたところで」
 平馬はそれを聞き流
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