今度は前にも増した大声で、がやがや喚くように言い出した。
「なんとかして平馬が仕合に出られないようにしてやろう!」
「そうだ、そうだ――やつ、風でも引かないかな」
「馬鹿! そんな呑気なことを言っている場合ではない。一人ずつ面と向って叶わない相手なら――闇討にきまっておるではないか!」
「そうだ、そうだ! 闇討だ! 闇討だ!」
「殺してはいけない。殺すと面倒だ」
「ただちょっと肩の骨を挫《くだ》くなり、指を折るなりして、今度の仕合に出られないようにしてやりさえすればよいのだ」
「なるほどそれにかぎる。さっそく、間者を放って、彼の動静をうかがわせるとしよう」
「それによって大勢で待ち伏せしてやってしまうのだ。向うは一人、こっちは大勢、平馬といえど鬼神ではあるまい。あに恐るるにたらんやだ」
「名案、名案!」
というわけで、あとは拍手喝采《はくしゅかっさい》、下妻の若侍一同、当の平馬がつい[#「つい」に傍点]鼻の先に聞いているとも知らず、好い気持でさわいでいる。
平馬も何気ない顔で、しきりにお茶を飲んでいたが、やがて丁寧に別れの挨拶をすると、静かに立ち上った。そして、ホウホケキョと鳴くう
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