は、邪魔をするだけ――。」
「おこよさん、」藤吉は、ちょっと改まった。「おいらあ、こんな厄介な探索は初めてだ。手も足も出ねえありさまだが、どうですい、あの武右衛門てえ野郎のことを、もそっと聞かしちゃあくれめえかの。」
「武右衛門さんのことって、あたしは何も知りませんけれど、なんでも、みなさんと仲が悪かったようでございますよ。もう仏ですから、あしざまに言うのはなんですけれど、ほんとに、厭なお人でござんした。」
「ふうむ、どうしてまた、そんなに厭《きら》われたんで――。」
「どうしてと申して、」と、おこよはちょっと逡巡《ためら》ったが、「女好きで、そのうえ、自分は大の色男のつもりで――うるさいったらないんです。」
「あの男は、今度越後の山奥とかから出て来て、ここで初めて顔が合ったんじゃあねえのかえ。」
「仲間の種《たね》を割るようですけれど、死んだ人ですから構いません。いいえ、今度はじめて出て来たどころか、いままで何年となく、上方《かみがた》からあちこち巡業《まわ》っていた人ですよ。わたしたちも、ずいぶん方々で会いましてございます。」
「そうかい。そんなことだろうと思ってた。」
 藤吉が考
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