釘抜藤吉捕物覚書
影人形
林不忘
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)落語《はなし》家
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)色物席|柳江亭《りゅうこうてい》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「足へん+宛」、第3水準1−92−36]
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一
三十間堀の色物席|柳江亭《りゅうこうてい》の軒に、懸け行燈が油紙に包まれて、雨に煙っていた。
珍しいものが掛っていて、席桟敷は大入り満員なのだった。人いきれとたばこで、むっとする空気の向うに、高座の、ちょうど落語《はなし》家の坐る、左右に、脚の長い対《つい》の燭台の灯が、薄暗く揺れて、観客のぎっしり詰まった場内を、影の多いものに見せていた。
扇子を使いたい暑さだったが、誰も身動きするものもなかった。その年は夏が早いのか、五月だというのに、人の集まるところでは、もう、どうかすると、こうしてじっとしていても汗ばむくらいだった。
軍談、落語、音曲、操《あやつ》り人形、声色《こ
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