がってんをするようにゆさゆさ[#「ゆさゆさ」に傍点]と動いて、背後に反った。思わずあっと叫んで人々は逃げ散る。無花果《いちじく》のような顎の下の肉、白い脂肪、断面《きりくち》あらわに首は危く竹の尖頭《さき》に留まっている。
「甚さん。」
藤吉が振り返った。
「発見《めっ》けたなあ誰だね。」
「あっし[#「あっし」に傍点]だ。」常吉が答える。「半時ほど前だから卯の上刻だ、親分も知ってなさるだろうが采女《うねめ》の馬場の中屋敷ね、あすこの西尾様お長屋の普請場へ面《つら》出しすべえとこちとら[#「こちとら」に傍点]早出だ、すたすた来かかってふい[#「ふい」に傍点]と見るてえとこの獄門じゃあねえか、いや、親分の前《めえ》だが、これにゃああっし[#「あっし」に傍点]も胆を潰したね。」
「何のこたあねえ、首人形だ。」
勘弁勘次が口を出した。すると弥次馬の中から、
「違えねえや。京名物は首人形とござい。」
と言う声がした。藤吉が見ると、色の浅黒い、遊人《あそびにん》風俗の見馴れない男が立っていた。
藤吉、別に気にも留めないと言ったようす。
「誰でえ、首は?」
「あ、それがさ。」と藤吉は耳の背
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