ろきっかいにおぼえそうろう》
之御膝下天狗並降魔神業存候爾来如斯悪戯《これおひざもとのてんぐならびにごうまじんのわざとぞんじそうろうもじらいかくのごときわるさは》
付一切無用左様被度承知置候事畢依之於上所払《いっさいむようにつきさようしょうちおかれたくそうろうことおわりかみにおいてところばらい》
被仰出候前早々退散諸州遠山江分山可有之候《おおせいだされそうろうぜんそうそうたいさんしょしゅうのえんざんへぶんざんこれあるべくそうろう》
  文久元酉年 夏至       町年寄一同
    大小天狗中
    降魔神中
[#ここで字下げ終わり]
 彦兵衛はにやり[#「にやり」に傍点]と笑った。五月末ごろから江戸中を脅《おびや》かしているこの一円の神隠し騒ぎ、腕自慢の目明しや好奇《ものずき》半分の若い衆が夜を日に継いでの穿鑿《せんさく》も絶って効ないばかりか、引き続いて浚《さら》われる者が後を絶たないので、町組一統寄合の上いろいろと談合の末が、これはどうしても天狗か魔神の所業に相違ないとあって、さて、ことごとしくも押っ樹てたのがこの「申上候一札」であった。この方角へはよく立廻るので、木札の立っ
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