釘抜藤吉捕物覚書
お茶漬音頭
林不忘
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)海老床《えびどこ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)三|助奴《すけやっこ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)どっ[#「どっ」に傍点]と起る笑い
−−
一
「はいっ。」
「はいっ。」
「ほらきた!」
「よいとこら!」
「はっ。」
「はっ。」
庄屋よ狐よ猟師よと拳にさざめく夕涼み。本八丁堀三丁目、海老床《えびどこ》の縁台では、今宵、後の月を賞めるほどの風雅《みやび》はなくとも、お定例《きまり》の芋、栗、枝豆、薄《すすき》の類の供物《くもつ》を中に近所の若い衆が寄り合って、秋立つ夜の露っぽく早や四つ過ぎたのさえ忘れていた。
親分藤吉を始めいつもは早寝の合点長屋《がってんながや》の二人までが、こう気を揃えてこの群に潜んでいるのも、なにがなし珍《ちん》と言えば珍だったが、残暑の寝苦しさはまた格別、これも御用筋を離れての徒然《つれづれ》と見ればそこに涼意も沸こうというもの。夢のような夜気に行燈《かんばん》の灯が流れて、三|助奴《
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