た[#「あたふた」に傍点]とそこへ飛んで来た。
「た、大変だ! 若え坊さんが裏の井戸へ――。」
「はっはっは、言わねえこっちゃねえ。提灯屋、ま、不平《こぼ》さねえで御用大事と――勘、どこかで茶漬けでもかっこんで帰るべえ。彦、紙屑籠を忘れめえぞ、はっはっは、いや、皆さん、何ともかともおやかましゅう――。」
五
「よくも親分、ああ早くから当りがつきやしたのう。」
「まあ、呑め、一杯呑め。」新網町の小料理屋おかめの二階へどっかり[#「どっかり」に傍点]と胡坐《あぐら》をかいた釘抜藤吉は、珍しく上機嫌だった。「おうっ、姐さん、赤貝の酸《す》を一枚通してくんねえ。こうっと――そうよなあ、傷口を検《み》て菜切りと睨んだんだが、玉が四時と来て、その下の土が八つ半からの雨にしこたま[#「しこたま」に傍点]濡れてるとすりゃあ、彦の鼻っ柱の千里利きじゃねえが、他から運んだと見当が立たあな。石垣上の黄色い花を見て、――勘、今日だきゃあ呑め、ま、一杯呑め――花を見て俺あ朝の癩病人を思いついたんだ。彦から貰った鞐もあるし、こいつあ臭えと上ってみるてえと、勘の前だが、落花狼藉よ。なあ、勘、枝を弄《
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