え。この穴は、きっと三方子川《さんぼうしがわ》の川底につながっているに相違ねえ」
もう、鍬《くわ》や鋤《すき》ではどうすることもできない。
一同は思案にくれてしまった。
水は、さながら噴水のようにわきあがってくる。
「お父上! お父上! 水の力で浮きあがってこられないの? お父上!」
チョビ安はもう半狂乱。
「オウ、野郎ども! 三尺をとけ。下帯も――」
なかば水音に消されながら、石金さんの胴間声《どうまごえ》がひびいた。
十六
穴の中から水がわき出たと聞いて、きもをつぶしたのは、結城左京の一派です。もういけない……! これ以上ここにまごまごしていたら、自分たちの身があやうい。
「だめだッ! 引きあげよう」
ナニ、引きあげるんじゃアない。逃げるんだ。
「もうこうなったら、先へ行った峰丹波殿《みねたんばどの》の一行に追いついて、助勢を借りるよりほかみちはない」
ささやきかわして不知火のやつらは、サッと刀を引くが早いか、一目散に闇の奥へ消え去った。源三郎と左膳が、生きているか死んでいるか、それを見きわめるひまもなく。
泰軒先生は、丸太を投げすてて穴のふちへ
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