策略があるのか、あわただしく、起きぬけの萩乃に目通りを願い出て、
「サテお嬢様、今日《こんにち》まで私は、意地ずくから、心ならずも源三郎さまにお敵対申しあげ、あなた様にも由《よし》ないお苦しみをおかけ申してまいったが、御存じのとおりお蓮の方は、逐電あそばされるし、拙者もつくづく考えるところござって、このたび転向……」
 転向? そんなことは言わない。
「このたび源三郎様におわびを申し入れましたところ、さすがは理のわかったお方、今までの非礼をことごとくおゆるしくだされましたのみならず――」
 うまく萩乃を言いくるめたものです。
 何事か思いたって、源三郎はゆうべのうちに、急に日光へ向かって発足した。ついては、丹波に萩乃を守って、あとから追いつくようにという伝言《ことづて》だったと、もっともらしい口構《くちがま》え。
 兄対馬守は造営奉行として、目下|登晃《とこう》中なのだから源三郎が所要あって、そっちへ出むくことは、不自然ではない。
 なるほど、源様は、ゆうべ三人を連れていつのまにか、屋敷を抜け出ている。
 自分の幼い時分から、この不知火《しらぬい》の道場にいて、父十方斎の信任あつかった
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