な大声をはりあげ、
「皆の衆! しばらくのお別れじゃ。泰軒とチョビ安は、これよりちょっと日光へ行ってまいる。安の父親というのが知れてな」
という声に、長屋じゅうから親爺やおかみさんや、兄イや姉ちゃん連が、ゾロゾロたち現われて、口々に、
「マア安さん、おめでとう。父《ちゃん》のいどころが知れたんだって?」
「安|兄哥《あにい》、こんなうれしいことはねえだろう。おめえの父《ちゃん》は、どこのなんてえ者だ」
チョビ安の親探しは、近処《きんじょ》かいわい、誰知らぬ者もない。今その親が判明して、泰軒先生に連れられて、これから旅に出るというのだから、長屋の連中は自分のことのように喜んで、美しい人情の発露、イヤ、もう、たいへんなさわぎです。竜泉寺の角まで送ってきて、そこで泰軒とチョビ安は、一同につきぬ名残りを惜しみ、日光をさして闇の街へ、大小二つの影法師が消えていったが。
すると、その真夜中過ぎのこと。
長屋の口きき役ともいうべき石屋の金さん方の表戸を、ドンドンたたく者がある。
寝ぼけまなこをこすった金さんが、出てみると……。
隻眼隻腕の白衣《びゃくえ》の浪人、うしろに御殿女中くずれのよ
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