おお、これか、チョビ安と申すは」
 と覆面の士《さむらい》は、泰軒へ、
「いや、わしとは思わず、ただある筋から、使いの者が来たと思って、応対してくれい」
 覆面のなかの柔和な眼が、静かにほほえんで、
「おぬしも知っておるであろう。あの愚楽老人ナ、彼は、全国に散らばるお庭番の元締めじゃから、ふと思いついて、愚楽老人にこのチョビ安なる者の親の探索を頼んだのじゃ。伊賀の者だということのみを頼りにナ――すると、それが知れたのじゃ」
「えっ! あ、あの、あたいの父《ちゃん》や母《おふくろ》が――?」
「おお、知れたぞ。今日知れた。で、お美夜への約束を果たそうと、さっそくわしが自分で……イヤ、こうして使いの者をよこしたわけじゃが、これ、チョビ安とやら、そちの父は、いま日光におるぞ、そちも日光へゆくか、どうじゃ。このたびの日光御造営の竣工式に、吉例により紫の衣紋《えもん》をつけて現われる人こそ、そちの父なのじゃ――」

       四

「ねえ、泰軒小父ちゃん、すぐ発足しようじゃアねえか。あたいの父《ちゃん》が知れたんだい! べらぼうめ! 朝までなんか待っていられるかい」
 とチョビ安は、涙のいっ
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