「茶壺の駕籠ではあるめえか」
そう思った。
小みぞのそばに、柳の垂れ枝。そのかげに身をひそめた左膳が、近づく駕籠を半暗《はんあん》にすかして見ると――蝋色《ろういろ》鋲打《びょうう》ちの身分ある女乗物。
と! 闇に氷の光一閃。同時に、駕籠わきの一人が、ウウム! と肩口をおさえてよろめいたとき、
「待った! 気の毒だが、その駕籠に用がある――」
二
「ヤッ! 狼藉《ろうぜき》者ッ!」
「人違いではないか。うろたえるな!」
「それッ、おのおの……」
いろいろな声が一時にわいて、侍たちは、ぴたりと駕籠を背に、立ちならんだ。
肩をやられた一人は、何か火急の用事のある人のように、タタタッと前のめりに、三枚橋を渡りきって、四、五間走ったところで、ぱったり倒れた。
一同は、そっちを振り向く余裕もなく、
「名乗れッ! われらは柳生対馬守藩中……」
「おウ、その柳生の駕籠と知って用があるのだ!」
すでに一人の血を味わった濡れ燕を、左膳は、ひだり手にだらりと下げて、よろめくように二、三歩、前へ出ながら、
「よウ、そ、その駕籠の中を一眼見せてくれ、壺でなかったら、おとなしく
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