ったかと見える一|塊《かい》の人影が、ノッソリ立ち現われた。
 それでも。
 穴のまわりのやつらは、まさかここへじゃま者が飛びこんでこようとは考えないから、あくまでも、仲間のひとりと思いこんで、
「石があったかと、きいているんだ」
「さっさと埋ずめて、引きあげようではござらぬか、結城氏《ゆうきうじ》」
 口々につぶやきながら、こわそうに二、三歩ずつ後ずさり。
 だが。
 結城左京にしては、チトからだが大きい。
 かれ左京、突然妙な服装《なり》をしてここにもどってきたのか――。
 この拍子に、暗がりで何も見えない彼らも、一時に合点がいったというのは。
 眼前の大きな黒法師の横から、子供の声がして、
「居候の小父ちゃん、この穴だよ、父上が落ちこんだのは! 早くこいつらを追っぱらって助けてちょうだいよ。ねえ、イソ的の小父ちゃん!」
「ヤヤッ! この子ッ?」
「ウム! 宵の口まで、この穴のまわりをうろつき、父上《ちゃん》、父上《ちちうえ》! と左膳を呼ばわっていたかの少年!」
 異口同音にさけんで、穴埋め組は、一度に鋤《すき》、鍬《くわ》などをふりかぶって身がまえた。
 黒い影の足もとから、小
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