のねえ、かわいそうに」
 と、お梶の手を取って、お美夜ちゃんもニッコリする。
 そのお梶が、この二、三日、急に、めっきりふさぎこんでいるのは、
「こんなかあいいお美夜ちゃんと、お蓮様を、人柱などにして、生きながら壁のなかへ封じ込めてしまわなければならないのか――!」
 と、親しみがますにつれ、あわれも深まったというのは、これは人情でそうあるべきところ。
 この人柱のことは、いくら極秘にしても、微風のようなささやきが、造営奉行所をとりまくお作事部屋に、つぎからつぎと伝わって、諸職人のあいだには、もう誰知らぬ者もない。
 この唖のお梶さえ、兄の手真似をりっぱに判断して、ちゃんと知っているくらい。
 口のきけない者だから、秘密のもれる恐れは断じてなかろう……というので、選ばれてこの母娘《おやこ》の世話をすることになったのだが。
 片輪だけに情が深く、やさしくされればひと一倍、恩にむくいたいという心のわくことには、係役人は気がつかなかったとみえる。
 はじめお蓮様は、ションボリうなだれてばかりいるお梶を変に思って、頭を指さして顔をしかめてみせたり、お腹《なか》をかかえてうなるやら、いろいろやっ
前へ 次へ
全430ページ中375ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング