一
田母沢《たもざわ》の橋を渡ってゆくと、左のほうに、大日堂《だいにちどう》。
荒沢《あらざわ》の橋の手前から、道を右にとって登ってゆくと、裏見の滝に出ます。
この滝道の途中に、雑木林のなかへ折れこんでゆく小みちがありますが、何も知らぬ近処《きんじょ》の人たちなどが、この道をはいってゆこうとすると、
かたわらの草むらから、ぬっと二、三人の人影が立ちあがって、
「コラコラッ、いずこへまいる」
お百姓などは、腰をかがめて、
「へえ、裏見の谷へ、草を刈りにまいりますので」
「いかん! この道を通すことはあいならん」
二、三人が口をそろえて、
「名主よりお触れ書がまわっておるであろうが。さては貴様、無筆だな。イヤ、無筆なら無筆で、読み聞かせられておるはず」
「この道は通行禁止じゃ。この付近へ立ち寄ってはならぬぞ」
きびしく叱りつけられて、追い返されてしまう。
とんぼつりの子供など、まれに看視の眼をまぎれて、この林間の小みちをかなり奥まで迷いこんでゆくと……。
むこうのこんもりした木立ちのかげにわらぶきの屋根が見える。ひっそりとして、人の住んでいる気配もな
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