れには深いわけのあることなのじゃ。どういうものか、いつの御造営にも、あの護摩堂の壁がいちばん先にいたんで、たちまち落ちてならぬ。で、それに犠牲《にえ》をささげて、壁のたたりを納めるこころと、かねては、この御修覆の儀の事なく終わるを祈念されて、あの護摩堂の壁へ、母と子と二人の人柱を塗りこめることになったのじゃ」
と聞いたときに、何やら作阿弥は、急に、不安な気もちがこみ上げてならなかった。
いわゆる、胸騒ぎ……。
「人柱を? 母と子の――」
「うむ。そこで、その母子《おやこ》なきがらをのむ壁を、永遠に守り、かつ、見はるために、千里をゆく其方《そち》の駒《こま》を、あれなる護摩堂の前にすえようと一決したのじゃ。任は重いぞ、作阿弥! 母と娘のたましいをしずめる、気高き神馬《しんめ》を彫りあげてくれい」
なぜか作阿弥は、気もそぞろの体《てい》で、
「そういたしますと、そ、その、母娘《おやこ》の人柱というのは、もうきまりましたので」
「客分として、大切にもてなしてあります。本人たちは、人柱などとは夢にも知らぬ。わしもまだ会いはしませぬが……」
と、主水正が答えた。
竹筒《たけづつ》
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