ま通りかかったのが垂水村《たるみむら》の岩氏《いわうじ》という人。
「なんの騒ぎです」
 と人々にきいた岩氏は、よせばいいのに、
「ははア、それはなんでもないことじゃ。袴《はかま》に継《つ》ぎのある者を見つけだして、それを人柱にすればよい。なんと名案であろうがな」
 と言った。
 いいだしたものが当たるというのは、よくあることで、袴のつぎとはおもしろい思いつきだというので、一同がめいめいの袴をあらためてみると。
 なんと! 岩氏自身の袴に横継ぎがあった。で、否応《いやおう》なしにつかまえられて、岩氏はこの長柄川の人柱にされてしまったのです。
 この岩氏の娘に、非常な美人があった。父の弔《とむら》いに大願寺を建て、一生孤独で終わろうとしたのだったが、その並みならぬ容色にこがれて言いよる若者のうちで、ひときわ熱烈なひとりの情にほだされて、河内《かわち》の禁野《きんや》の里に嫁《か》したのです。
 しかし、父の最期にこりて、口はわざわいのもととばかり、かたく口をとざして唖《おし》でおしとおしたので、いくら惚れた男でも、これでは人形といるようでおもしろくない。
 結婚解消……となって、女は垂水
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