かりなく……」
 なんかと、あくまでも、伊賀の暴れん坊の兄貴ぶっています。
 丹波のものものしい構えに対して、源三郎は心憎いほど落ちついている。口の中で、小唄か何かうなっているようすで、
「いきますかな」
 ひとり言のよう口ずさみ、抜きはなった一刀をピタリ青眼につけたまま、ジリリ、ジリリと、爪先《つまさき》きざみに詰めよって行く。
 もう草露もほしあがるほど、夏の陽は強く照りわたって、ムッとする土いきれが、この庭|隅《すみ》の興奮に輪をかけるのだった。
 枯れ木に花の咲いたような、百日紅《さるすべり》が一本、すぐ横手に立っている。そのこずえ高く、やにわに蝉《せみ》が鳴きだした。
 ジーンと耳にしみるその声のみが、この瞬間の静寂を破るすべてだ。
 源三郎手付きの伊賀侍も、不知火道場の連中も、わきあがる剣気におされるように、その取り巻く人の輪が、思わずうしろにひろがる。
 誰も彼も、いざといえば抜くつもり。
 みな一刀の柄に手をかけて。
 それと見るより、田丸主水正は、大声に叱咤《しった》して、
「双方助太刀無用! 手出しをしてはならぬぞ!」
 白扇を斜《しゃ》に構えて、どなりました。
 
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