》がるであろうから、お露どのと申したナ、なにとぞ貴殿は、それまでこちらにごゆるりと御休息あって――」
 お露はポカンとしながら、玄心斎、大八ら、五、六人のおもだった者が、にわかのしたく、あわてふためいて邸《やしき》を出て行くのを、ぼんやり見送っていた。

       四

 人間は、思うこと意のごとくならず、心細く感ずる瞬間に、本心にたち返るものだ。
 今のお蓮様《れんさま》がそうである。
 故司馬先生の在世中から、代稽古|峰丹波《みねたんば》とぐる[#「ぐる」に傍点]になって、この不知火《しらぬい》道場の乗っ取りを策してきた彼女、それからこっち手違いだらけだ、策動にも、気持のうえにも。
 第一に、義理ある娘萩乃の婿として乗り込んできた伊賀の暴れん坊に、お蓮様が横恋暴。道場も横領したいし、源三郎も手に入れたいし……これでは、お蓮様の鋭鋒《えいほう》もすっかりにぶってしまって、峰丹波の眼から見ると、はがゆいことばっかりなのはむりもない。
 丹波もお蓮様も、柳生源三郎などはどうでもいいのだった。それよりも、彼が婿引手として持ってくる柳生家重代の秘宝[#「秘宝」に傍点]、こけ猿の茶壺をねら
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