》がるであろうから、お露どのと申したナ、なにとぞ貴殿は、それまでこちらにごゆるりと御休息あって――」
お露はポカンとしながら、玄心斎、大八ら、五、六人のおもだった者が、にわかのしたく、あわてふためいて邸《やしき》を出て行くのを、ぼんやり見送っていた。
四
人間は、思うこと意のごとくならず、心細く感ずる瞬間に、本心にたち返るものだ。
今のお蓮様《れんさま》がそうである。
故司馬先生の在世中から、代稽古|峰丹波《みねたんば》とぐる[#「ぐる」に傍点]になって、この不知火《しらぬい》道場の乗っ取りを策してきた彼女、それからこっち手違いだらけだ、策動にも、気持のうえにも。
第一に、義理ある娘萩乃の婿として乗り込んできた伊賀の暴れん坊に、お蓮様が横恋暴。道場も横領したいし、源三郎も手に入れたいし……これでは、お蓮様の鋭鋒《えいほう》もすっかりにぶってしまって、峰丹波の眼から見ると、はがゆいことばっかりなのはむりもない。
丹波もお蓮様も、柳生源三郎などはどうでもいいのだった。それよりも、彼が婿引手として持ってくる柳生家重代の秘宝[#「秘宝」に傍点]、こけ猿の茶壺をねら
前へ
次へ
全430ページ中235ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング