」
「上様のお手で、一夜のうちにこの屋敷の隅に埋ずめた金額を――サア、まず、日光修覆にカッキリ必要なだけ。それより百両と多くもなく、また、百両とすくなくもないであろう」
「まずさようなところかと……なにしろ、あの愚楽老人のやることでございますから」
と主水正《もんどのしょう》は、はじめて微笑をもらした。
「田丸、上様に日光の金を出してもらうなどと、イヤ、とんだ恥をかいたの。だが、わが藩に金を使わせる気で、その金を御丁寧に、こっそり庭の隅に埋ずめておかねばならん羽目にたちいたったとは、徳川もいい味噌《みそ》をつけたものじゃ」
主水正はギョッとして、
「これッ、殿!」
と口で制しながら、眼は、鋭くかたわらのお藤へ。
その警戒を見てとって、お藤|姐御《あねご》はニッコリ、
「フン、あたしの前で、公方様の悪口を言ったって、なにもそんなに用心することはありゃアしない。将軍様にしろ、隻眼隻腕の浪人さまにしろ、お侍の悪口なら、こっちが先に立って言いたいくらいだよ」
「こういう女じゃ」
対馬守は愉快そうに笑って、主水正へ、
「別所信濃《べっしょしなの》へ、早々《そうそう》余の到着を知らせたが
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