まれと見えますかね? フン」
かたわらの侍たちが、たけりだって、
「コラ、女! どなた様のおん前だと思う。気をつけて口をきかぬと、ウヌ、手は見せぬぞ」
「よいよい、おもしろそうなやつじゃ。うっちゃっておけ……そこで女、貴様にきくが、逃げたと申すつれの男は、何者かの?」
「サア、……神奈川《かながわ》で顔が合って、のんきに東海道をのぼろうと、マア、話しあいがついていっしょになっただけでね、どこの馬の骨だか、ハイ、あたしゃいっこうに――」
「知らぬと申すか」
じっとしばらく、何事か考えていた対馬守、急にニッコリして、
「ナア女、しばらく芝居をしてみる気はないかの? 余のもとに」
「アイ、それア狂言によりけりでネ、どうせ世の中は、芝居のようなものですから、役によっては承知しないともかぎりませんのサ」
「フーム、これはなかなか話せるわイ――これ、ここはよい、あちらへ!」
と対馬守、いならぶ家臣たちへ、ヒョイとあごをしゃくった。
藪《やぶ》の白虎《びゃっこ》
一
簡単なことを複雑にする……。
うつろな制度、内容の腐りかけている組織を、むりに維持してゆくために
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