を取られて面目なく、泣くなく、江戸に帰りやがったに相違ねえ。
一つ、ひやかしてやれ。
突拍子もない調子を張りあげて、
「さわるまいぞエ手を出しゃ痛い、伊賀の暴れん坊と栗のいが[#「いが」に傍点]」
聞こえよがしに歌ったものです。
「およしなさいよ、お前さん。伊賀侍をおこらせると、あとのたたりがこわいことは、誰よりも与の公、お前がいちばん知ってるはずじゃアないか」
お藤がたしなめたが……。
すでに遅かった、そのときは、
「コレ、そこへまいる両人、ちょっと待て」
「ヘイ、あっしどもで」
立ちどまった与吉が、ヒョイと見ると、肩をいからした頑丈な侍が、広い本陣の門口から出て来ようとしている。
お藤はソッと与吉のひじをついて、
「ソレ、ごらん、おまえさん。だから言わないこっちゃアない。藪をつついて蛇を出したじゃあないか」
侍は威猛高に、ツカツカと寄ってきて、
「コラッ! 栗のいが[#「いが」に傍点]がいかがいたしたと?」
その大声に、供溜りにいたらしい若侍が五、六人、バラバラッととびだしてきたが。
それよりも!
与吉のおどろいたことには――。
あがり框《がまち》にせのびを
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