戸へ出てまいれと、それでそちを迎いによこしたのか」
「ヘイ、至急に御下向をわずらわしたいと、手前お迎いのお使いなので」
「出てきたからよいではないか。ここはもう程ケ谷じゃ。江戸はつい眼と鼻のあいだ……江戸へ近づけば、日光へも近うなる……」
家老田丸に会えば、すべてがわかることだが……かならずこの裏には、おためごかしの公儀の手が、働いているにきまっているぞ――。
壺の財産が見つかった……どんなにおよろこびになるかと思いのほか、対馬守はだんだん蒼白に顔色を変じて、両手がブルブルとふるえてくる。いつもの癇癖《かんぺき》がつのるようすだから、お側の者は、どうしたことかとサッパリわけが解らない……鳴りをしずめています。
「エエイッ! 徳川を相手にするには、どこまでも狐と狸のだまし合いのようなものじゃ」
人に聞かれては容易ならぬ言葉! 列座が、恐ろしさに色を失ったとたん、脇息を蹴たおしてつったちあがった対馬守、
「一風宗匠は、まだ起きておるであろうナ。コレ、案内せエ、宗匠の部屋へ!」
その瞬間です。
本陣前の程ケ谷宿の大通りを冴えた三味の音とともに、アレ、たかだかと流してくる唄声が……。
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