、はやくかたをつけて――と。
 やけ半分のこういう覚悟だから若侍の案内で、恐る恐る対馬守の前へ出てきた儀作。髪は乱れ、衣紋はくずれ、眼が血ばしって、口を引きむすんで、相が変わっている。お側の侍二、三人は、思わず膝を浮かせて、
「田丸様の若党と申したな。しかとそれに相違ないか」
 刺客とにらんだのかもしれない。
 儀作、それに答える余裕などはありません。もうこわいのも忘れて、いきなり藩主の前にすすみ、バタリと両手をついて平伏しながら、
「申しわけござりません。手前は、田丸様の御命を奉じ、お国おもてへたち帰ります途中……持ったお壺を何やつとも知れぬ者にうばわれまして――」
「貴様の話は、サッパリわからぬぞ。壺がどうしたとやら申すが、そんなことは気にかけんでもよい」
 なぜか対馬守、――すこしもあわてません。

       六

 対馬守様は、あわてません。ちっとも。
 どなるようにつづけて、
「馬鹿なことを申せ、あの主水正が、ほんもののこけ猿を若党一人にかつがせてよこすわけはないッ。さようなものは盗まれても大事ない。それより、主水正より言いつかった使いの口上があるであろう。口上を言え口上
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